昨年のことでした。
感性キッズでお世話になっている皆川公美子さんからご紹介いただいたあやかさんが、
私達親子のことをインタビューして歩みをまとめて下さいました。
ここに書かれていることは、過剰なところも不足もなくて、
あらためて気づきをいただけたことに、とても感謝しています。
あやかさんが最後に書いて下さったメッセージは、
このブログを書こうと思った私のメッセージでもあります。
以下、あやかさんの文章です。
HSC息子を育てる
HSC(Highly Sensitive Child)の中学生のお子様をお持ちのCさんに、息子さんの特性に気づいてから、現在に至るまでのお話を伺う機会をいただきました。HSCとは、生まれつきの神経系の特性により、さまざまな面で敏感さ、繊細さを持つお子さんのことで、5人に1人いると言われています。
現在ではお子さんのよき理解者となられ、良好な親子関係を築かれていらっしゃるCさんですが、これまでの子育てをふり返ると、「ずっと大変でした」と仰っていました。
HSCのお子さんは素晴らしい才能を持っているのですが、一方で、学校や社会の中では、しんどさを感じる場面が多いという現実があります。KくんはCさんとともに、どのように乗り越えてこられたのでしょうか。
<意地悪と勘違いされてしまった保育園時代>
保育園に通っていた5,6才頃、ブロックなど興味のある遊びは一人で延々と続けられる一方、サッカーなどの団体スポーツや集団遊びがうまくできず、お友だちとのトラブルが多かったそうです。集団遊びが苦手だったのは、他の子とは違う視点で物事を見ていて、ルールよりも自分の興味にしたがって行動しがちだったからのようです。集団遊びが苦手だと言っても、人に興味がないのではなく、むしろ人の気持ちの機微を敏感に感じ取ることができるKくん。お友だちとトラブルになってしまうのは、気持ちを正確に言葉にできないもどかしさが根底にあるようでした。あるとき「悔しいとうらやましいは一緒なの?」というKくんの鋭い質問にハッとなったCさん。Kくんが複雑で繊細な内面を持っていることを初めて強く意識した瞬間でした。
<一進一退の小学校生活>
小学校に入学すると、他の多くのHSCのお子さんと同じく、Kくんも一斉授業というスタイルになかなか順応できずに、苦労しました。深く考えるタイプのHSCの子にとっては、たとえ納得できなくても言われたとおりにする、ということはとても耐えがたいことなので、学校生活の中では常に葛藤を抱えることになります。一人で静かに過ごせる場所を確保してもらい、時折ダウンタイムを取ることも必要です。実際、Kくんが「このままだと先生を殴ってしまいそうだから休みたい」とCさんに訴えてきたこともあったそうです。HSCについては学校の先生の間でもまだまだ認知が進んでいないこともあり、合理的配慮をしていただけるかどうかは、担任の先生のご理解やクラスの雰囲気による部分が大きいのが実情です。そのため、Kくんの小学校生活は、一年ごとに状況が大きく変わり、まさに一進一退の時期だったそうです。
<Kくんの世界を一緒に守ろう、とCさんが決意するまで>
お仕事の傍ら、定期的に学校に出向くなど懸命にKくんをサポートされていたCさんですが、小学校2年生のとき、学校での先生とCさんの会話がきっかけで、親子関係にも亀裂が入ってしまったことがあったとか・・・。わだかまりができることがあっても、それを乗り越えて再び親子関係を深めていけた秘訣をお伺いしたところ、スキンシップを取るように心がけていたのがよかったかもしれない、と教えてくださいました。学校行事の前後など、Kくんがしんどそうなときに、Cさんの方から何も言わずにハグするなどしていたそうです。どんな状況のときも寄り添っているよ、というCさんの思いはきっとKくんに伝わったでしょう。
そうしてまた距離を縮め、絆を深めていったCさんとKくん。次第に、お互いの考え方などについて、歯に衣着せずに話し合うことができるようになりました。激しい言い合いになることもありましたが、対話を重ねていくうち、お互いの考えや、そのもとになっている感覚がこんなにも違うものなのかと、Cさんは驚かれたそうです。一方、Kくんは、「お母さんは本当の意味では僕のことを理解してくれていない」という思いを募らせていきました。
そして、小学校5年生のある日、彼はCさんに対して、レジュメを準備して数時間にわたる壮大なプレゼンを行ったのです。それはCさんにとって、母としての1つのターニングポイントになりました。Kくんの見ている世界、価値観を一段深く感じ取ることができたと同時に、それを守りたい、Kくんに貫かせてあげたいとの思いが湧いてきたそうです。
<自他との対話を深め、才能を発揮し始めたKくん>
Cさんとともにさまざまな困難を乗り越えて、中学生となったKくん。当初、一人になれる時間・場所を確保できるよう特別学級を用意してもらうという話もありましたが、お友だちと一緒にいたいという本人の選択で、普通学級で学んでいます。学校という環境とも自分なりに折り合いをつけることができるようになり、元気に過ごしているそうです。幼い頃はチームスポーツが苦手でしたが、今では、小学校高学年の頃から仲良くなった友だちと、日々野球を楽しんでいるそうです。Kくんいわく、「野球は可能性のスポーツ」。ゲーム展開に合わせた戦略の選択を考えるのが面白いそうです。
幼い頃から発揮していた、人の内面への鋭い洞察力もますます磨かれています。日頃の会話の端々からCさんの勤務先の人間関係を的確に把握しており、戦国武将になぞらえながらアドバイスをしてCさんを驚かせたこともありました。Kくんの才能は将来、組織マネジメントやコンサルティングなどの分野で活かされるかもしれません。
いまKくんが安定した学校生活を送れているのは、小学校時代のさまざまな経験を彼なりに消化し、落としどころをみつけた、ということであるようにお話を聞いていて感じました。「学校には本当の自由はない」という彼の言葉がそれを物語っているように思います。生まれつきの資質として、鋭い洞察力を持っていることに加え、皮肉ではありますが、学校生活の中での葛藤が契機となって、自己と向き合う心の器がより深く大きく拡げられ、俯瞰的な見方も獲得していった一面があるように、お話を伺っていて感じました。それは、並大抵のことではないと思いますが、それでもKくんがさまざまな苦難を乗り越えてしなやかな心の軸を手に入れられたのは、やはり、どんなときもKくんに寄り添い、理解しようとするCさんの存在があったからではないでしょうか。
CさんとKくんの歩みをふり返ると、CさんのKくんに対する関わり方は、次の5段階を行き来しながら進んで来られたように思いました。
①資質に気づく
②寄り添う
③話し合う
④理解を深める
⑤覚悟を決める
この5段階は、HSCのお子さんを持つ他の親御さんにとっても1つの指標になるかもしれません。
最後になりましたが、今後、Kくんがその才能をさらにどのように伸ばしていくのか、楽しみにしています。そして、この文章がHSCのお子さんとの関わりに悩まれている方にとって、少しでもヒントになりますように。
by Ayaka Masuda
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